2020年3月7日(土)
学生時代の旧友が自殺した。2019年7月の出来事。その情報が耳に入ったのは半年後、年明けて2020年1月のことだった。
正直あまり実感がわかなかった。昨日の土曜日は大学時代のメンバーで、彼が自殺したことを確かめる為に遠出をした。
現地に着いて知ったこと。彼は大きな犯罪を度々繰り返した後、樹海で独り命を絶っていた。
多額の損害賠償を残して命を去った彼の親族は自己破産しており、とても普通の暮らしには戻れない世界にある。
旧友の彼は、灰となっていた。
居た堪れない。
ただ、彼を旧友と呼ぶには理由がある。
旧友の彼は、大学のコミュニティにおいても、「やってはいけないこと」を繰り返していた。
大学に入学して所属したサークル。同じブロックで仲良くなったメンバーがいる。それが旧友の彼。学年は同じだけど年齢の違う僕に対して、フラットに接してくれた。嬉しかった。
スポーツ選手としてリスペクト出来る面があったり、音楽を聴くという共通の趣味もあったり、意気投合した。僕と違って彼は社交的だった。彼を介して紐づる的に友人が増えた。友人関係を0から作り始める大学1年生の当時の僕にとって貴重な存在だった。
練習の帰りにすき家に行ったり、衛生的でないカラオケボックスで一緒にオールしたり、意味のない、でも大切な瞬間を過ごした。
ただ、そんな日々はずっと続かなかった。
「財布のお金が減ってる気がする」
そんな声が多くあがるようになった。いろいろ確認した結果、それは旧友の彼が盗んでいる仕業であるという仮説に至った。
仮説を実証するためにこんなことしたくはないけど・・・と誰もが思いながら、我々は監視カメラ替わりにビデオカメラを空間の端っこに置いて、いつものように過ごすこととなった。録画された映像を確認すると、彼は確かに盗んでいた。人情的なメンバーが多いコミュニティだったから、旧友の彼に何度かチャンスを与えたが、確実に毎回お金を盗んでいた。これはダメだ、となった。
警察に届けるか悩んだが、犯罪者にはしたくないという気持ちが強く、踏みとどまった。これは当時の我々の出来る最大限の愛だった。我々は徐々に旧友の彼と距離を置くこととした。すると、彼は察したのか、関係が無くなった。関係が0になったのは大学2年生の夏ごろ。以降、一度も面識を無くした。
しかし今となっては通報しておけばよかったと後悔している。旧友の彼は、社会人になり、およそ億単位のお金を横領してしまった。もし、大学生時代に通報して処罰を受けていれば更生できていたのだろうか。
自業自得だなと冷たく思っている自分もいるので複雑な心境。
唯一、最後まで歯切れが悪いこと。彼が命を絶った日の数日前付で、LINEの不在着信が残っている。
何を伝えようとしたの?
君は犯罪者だし、然るべき運命を辿ったと思う。
でも、君無しでは僕の今の生活はなかったかもしれない。
だから、いままでありがとう。
安らかに。
2020年3月